メリーの不思議な夢

声優の茅原実里が2022年12月23日(金)から12月25日(日)までの3日間、河口湖円形ホールで『メリーの不思議な夢』を開催する。この公演では、茅原実里がキャリアで手にしたすべての武器を引きずり出し、自身初の一人芝居へと挑戦。朗読、歌唱、トークにコメディ、あらゆるエンタメ要素を詰め込んだオリジナルストーリーを、文字通りたった一人で展開していく。   


茅原実里インタビュー

「絶対に成功させる!」という思いで決めた、無料公開。

――今回のプロジェクトに関しては、YouTubeチャンネル「ミノリズム」を通して、ご自身の言葉でも誠実に語られています。最初に、そうした発信の場を作られた中で感じていることを教えてください。 

音楽活動を休止する前から、よく関係者の方たちに「YouTubeを始めてはどうですか」と言われてきたのですが、私はお仕事の中でも特に動画撮影が苦手で、ずっと避けていたんです。なので、思い切ってチャンネルを開設するまですごく悩みましたが「今まで以上に私を近くに感じる」とコメントいただけることがうれしくて、うれしくて、今では本当にやって良かったと思っています。振り返ってみると、以前は「少しでも“茅原実里”の音楽に寄り添った人間性であらなければならない」と、背伸びしていたところがありました。せっかく作り上げていただいた美しいイメージに傷をつけたくなくて、歌う以外のことが怖かったんです。そんなふうに気にすること自体が勘違いだったのかもしれないけど、でも、実際のポンコツな部分も含めて(笑)、こんなにも自分のことをリアルに伝えられる場所はこのYouTubeチャンネルが初めてですね。今、自分で撮影から編集まで行って週に2本アップしているのですが、これがなかなか大変で、全力で毎日を生きている感じがします(笑)。全力で作った動画をアップして、みんなが「元気になったよ」とリアクションをくれて、私もそこでエネルギーをもらって、また次の動画へ向かうという繰り返しが本当に充実していて「めっちゃエンタメしてるじゃん!」と思います。

 

――チャンネル登録者数10000人という目標も、今回のプロジェクトに向けてというところが大きかったそうですね。

はい。初心に帰る思いで「一人でも多くの人に、茅原実里の存在を知ってもらいたい」と始めたブログと同じ名前でチャンネルを開設したのですが、過去に立たせていただいた武道館のキャパシティを目標としたのは、今、応援してくださっている方はもちろん、一度でも私を応援してくださったことがある方にも集まっていただき、ラストライブからほぼ1年というタイミングで、新たな一歩を踏み出す瞬間を見届けて欲しかったからです。

 

――座席によってチケット料金が異なること、そして、公演後すぐにYouTubeで全編無料配信するという試みには驚きました。

チケット料金の件は、正直、怖かったのですが、みんなに納得して楽しんでもらう方法をたくさん話し合いました。私が動画で話したことを真っ直ぐに受け止めて、応援してくださる方が多かったのには、本当に救われる思いでしたね。とはいえ、歌手活動をお休みした私が地方で5公演も観客を動員するのがどれだけ難しいことか、自分でもわかっているつもりです。それなのに、あらかじめ無料公開することを発表するなんて矛盾していると思われるでしょうか。でも、私も含め制作に携わる方たちは「絶対に成功させる!」という強い気持ちで取り組んでいるんです。満席を大前提としているので「見たいのに、見られない」という方が出なくなるように考えてのことなんですね。

 

――ちなみに配信されるのはどの回になるのでしょうか? 公演ごとに内容が異なるのかも気になるところです。

河口湖円形ホールは外からの自然な光が入ってくるので、昼夜でステージの印象が様変わりするんですよ。その点も含め、どの回を配信するかはこれから検討していきます。内容は、基本的に変わらない予定です。同じ台本の中での変化を楽しんでもらえたらいいなと思っています。

 

富士河口湖町を舞台に、自然の豊かさと人の温かさを感じてほしい。

――富士河口湖町を再スタートの地と決めた理由も動画で語られているところではありすが「これぞ、やまなし大使の休日」動画に登場されたステラシアター近隣のファミリーマートの鈴木さんとのやりとりには、現地の方たちとの交友の深さが伺えました。

鈴木さんはいつも愛情いっぱいに私を迎えてくださり、私の気持ちを汲んで「いつでも帰ってきなさい」と言ってくださるのが本当にありがたいです。早く、みんなを新しいかたちで連れていきたいな。富士河口湖町は13年間にわたってライブをやってきた特別な場所なので、自分がどんなふうになっていったとしても何かしら関わっていきたいという思いでいたんですね。それで、身近な方たちにそういう話をさせていただいているうちに「やりたいなら、やりましょうよ」とおもしろがってくださったのが、このプロジェクトの始まりでもあります。プライベートで自然を感じに通う中で、河口湖ステラシアターの館長さんといろいろなお話をして、ご協力いただけることにもなりました。

 

――茅原実里といえば夏の河口湖でしたから、冬の河口湖というのも新鮮ですね。  

私も冬に催しをするのは初めてなので、新しい季節に、またみんなと一緒に思い出の場所から始めることができるってすてきだなと思いました。めちゃくちゃ寒いと思いますが、きっと空気も澄んでいて気持ち良いですよ。今回の『メリーの不思議な夢』と連動させて、町を巻き込んで盛り上がっていこうと考えています。

 

――具体的には、地域活性企画としても盛んな謎解きゲームのイメージでしょうか?

まだ制作段階ですが、いわゆる謎解きのようなことは考えていません。私の演じるメリーのいる世界が、富士山の見える河口湖畔なんですね。実際の町と関連付けることで、ただ会場に来て終わるのではない、長くゆっくりと楽しめる仕掛けを作っていきます。物語の世界観が自分のまわりに広がる感覚は、なかなか都会では味わえないものです。そして地方ならどこでも良いわけではなく、河口湖町だから意味があります。みんなが想像することを楽しむお芝居だからこその、ライブでも体験できない“何かがあるのではないかと思うんです。河口湖ステラシアターでのサマーライブが10周年を迎えたとき、いつも支えてくださっている店舗さんに足を運んだり、マップを作ってみんなにも楽しんでもらう企画を行う中で、少しずつ育まれてきたファンの方たちと町の方たちの絆のようなものを知って本当に感動しました。自然の豊かさ、そして人の温かさを感じてもらう機会にしたいです。

 

――初めて富士河口湖町を訪れたり、お一人でいらっしゃる方も楽しめますか?

特別、構える必要はないのかなと思います。どこへ行っても「茅原さんのファンの方たちは、本当にマナーが良いですね」と言われ続けてきましたし、町の方たちも思いやりにあふれていて、きっと何か困ったときには助けてくださると思うんです。

 

18年間磨いてきたすべてを“武器”だと言えるように。

――以前「演じることに苦手意識を持っていた」というお話を伺ったことがありますが、春陽漁介さんのもとで朗読劇、そして演劇へと挑戦を重ねていく中で何か見つけられたものがあって、今回の一人芝居へと至ったのでしょうか? 

ずっと思っている「お芝居って何だろう?」という疑問に答えが出せているわけではないのですが、演劇として『EMMA』をやらせていただいたとき、自分の心が素直に動いたり、ときめいたりする瞬間があって、もっとそれを感じてみたかったんです。ただ、私自身、当初は朗読劇が会場の設備や雰囲気にも合うと考えていたので「新しい可能性を見せるなら一人芝居はどうですか?」と春陽さんが提案くださったのに驚きました。でも、それから春陽さんが演出されていた板橋廉平さんの一人芝居を見させていただいて「命賭けの時間だな……」と思ったとき、今の自分が挑むものとしてすごくしっくりきたんです。本当に台本を覚えきれるのかすら不安ですが(笑)、自分がどこまでできるのかというところに挑戦したいです。

 

――「夢」というモチーフを受け取ったときは、どのように感じられましたか?

おもしろいなと思いました。漠然とした一人芝居への不安を抱いていましたが、メリーの話が上がってきたときに、何かが見えた気がしたんです。実は、最初はまったく別の物語で進んでいたんですよ。演劇の劇場のような演出が行えない中でやるべき物語なのか、引っかかりのあるまま打ち合わせを重ねていました。このことは、無事に公演を乗り越えられたらまたお話しさせてください。春陽さんが苦しんでいるのを見るのは、私も苦しかったです。ものを作るというのは本当に大変なことなんだと、あらためて実感する日々でした。

 

――以前の茅原さんであれば、2番目の物語にたどり着いたところからコミットしていたかもしれませんね。 

そうかもしれませんね。いろんな人たちのおかげで、私はステージに立ってパフォーマンスすることだけに集中すれば良かったんです。今は、用意されたものを託されるのとはまた違う興奮と喜びを感じています。こんなにも一つのプロジェクトを立ち上げて作っていくことに、自分自身の勇気や覚悟、責任が生まれたのは初めてかもしれません。そして、これまでの18年間の経験があるからこそぶつかっていけるのだと思います。

 

――キャッチコピーで謳われている「わたしにしか創れないエンタメを届ける」とは果たしてどのようなものなのか期待がふくらむところですが、音楽活動こそお休みされながらも、今回のような一人芝居、言うなれば〝声〟を使った表現を続けられることの誓いともなる公演だと受け止めております。

ありがとうございます。もともと、引退することも考えていました。でも、それを留めさせてくれたのが、ラストライブ後にも届くファンのみなさんの声、そして、これまで演じてきたキャラクターたちだったんです。自分の中で「今後、誰か別の声優さんにバトンをお渡しするのか?」「……否!」と(笑)。茅原実里は声優としてデビューさせてもらって、そのくせ声がコンプレックスなことも、お芝居への苦手意識もずっとずっと変わらないけど、それでも……今は、それを武器にしたい!

 

――これまで声優アーティストとしてさまざまなことに挑戦してきた中で磨いてきたスキルが、自分自身でも初めて〝武器〟だと言えるようになる。そんな公演を目指されるということですね。

そうですね、そう言いたいです! 「生まれ変わるなら生きてるうちに」という言葉がありますが、これまでの“茅原実里”を破壊する心づもりで動画も作っていて、もっともっと自分自身遊ぶようにエンタメしていきたいですし、殻を破れたらいいなと思います。でも、とにかく、こうして富士河口湖町で新しい一歩を踏み出せるのも、本当に応援してくださるみなさんのおかげなんです。感謝の気持ちを抱きかかえて、すてきなクリスマスにできるよう準備に励みますので、どうぞよろしくお願いします。

 

取材・文:キツカワトモ


メリーの不思議な夢

2022年12月23日(金) 〜 12月25日(日)

河口湖円形ホール

主演:茅原実里

作・演出:春陽漁介(劇団5454)

 

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2022年9月9日(金) 〜 9月25日(日)

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